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パウエル議長の最後の戦い:ジャクソンホールで問われる遺産とFRBの独立性

レポート

配信元:株探ニュース

投稿: 2025/08/16 02:56

 パウエル議長は、来週の金曜日にジャクソンホールで開催されるFRBの経済シンポジウムで、キャリアの集大成となり得る演説に臨む。それについてバロンズ紙がコラムを伝えている。

 演説は昨年同様15分程度と短い内容になる見込みだが、トランプ政権からの批判を浴びる中、FRBの実績と独立性を擁護する最後または最大の機会となる可能性がある。

 今年の会議テーマは「転換期にある労働市場」。人口動態、生産性、移民といった構造的要因が米雇用市場と経済全体をどう変えていくかに焦点を当ている。パウエル議長にとっては、物価安定と最大雇用という二大責務を果たしながら、構造変化と政治的逆風をどう乗り越えるかが最大の課題だ。

 トランプ大統領は、利下げを見送るパウエル議長を「頑固者」などと批判し、FRB本部の改修工事の進行にも難癖をつけ、任期途中での解任を目論んでいる。後任候補の選定も始まっており、その多くは早期利下げやFRB改革に前向きな人物とされる。

 歴史的にも政治干渉は中央銀行の判断を歪めてきた例があり、1970年代のニクソン政権下では低金利維持がインフレ加速を招き、ボルカー議長による急激な利上げと景気後退を余儀なくされた。

 パウエル議長の任期は来年5月までだが、再任や残任務継続は不透明。2018年の議長就任以降、パンデミックでの緊急利下げ・資産購入、2021-2022年の高インフレ局面での急速な利上げ(計11回)を経て、現在のインフレはPCEベースで2.8%まで低下した一方、2%目標の達成には至っていない。雇用は堅調ながら鈍化の兆しがあり、7月の非農業部門雇用者数(NFP)の増加は7万3000人と低水準だった。さらに関税の影響で輸入物価や卸売物価が上昇し始めている。

 短期金融市場では9月FOMCでの0.25%の利下げをで90%超で織り込んでいる。その一方、0.50%のおお幅利下げを支持する声や利下げ不要との見方もある。

 その意味でも来週のジャクソンホールは、パウエル議長が利下げ方針を直接示す場ではないが、「経済見通しと政策枠組みの見直し」という演題で、今後の景気評価方法や関税対応、労働市場の位置づけの再定義など、FRBの意思決定基盤を明らかにする重要な機会となる。

 政治的圧力の中で独立性を守れるかは、FRBに対する信用と市場の安定性を左右する。エコノミストは「パウエル議長は自身の遺産をFRBの独立性維持に置いているようだ」と指摘する。今回の会議は、パウエル議長が経済運営、政治との駆け引き、そして将来の干渉に耐え得る政策枠組み構築という三つの役割をどう両立させるかを測る場となる。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

株探ニュース

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