レポート
配信元:株探ニュース
投稿: 2023/06/07 11:40
●主なポイント
○市場の関心は3月に起きた金融不安から企業業績へ、そして月末には(下半期の)予想利益へと移っていきました。5月のFOMCでの0.25%の追加利上げは完全に織り込まれており、大半の市場関係者は5月を最後に利上げが打ち止めになると予想しています。
⇒4月のS&P 500指数の騰落率は1.46%の上昇となりました。3月は3.51%上昇し、2月は2.61%の下落でした。年初来では8.59%上昇しています(2022年の年間騰落率は19.44%下落、2021年は26.89%上昇、2020年は16.26%上昇)。
⇒4月の市場は、11セクターのうち8 セクターが上昇しました。3月は7セクターが上昇し、2月は1セクターのみが上昇しました(情報通信だけが0.29%上昇)。騰落率が4月に最高となったのはコミュニケーション・サービスで3.56%上昇しました(年初来では24.46%上昇)。最低となったのは資本財・サービスで1.22%下落しました(同1.77%上昇)。
⇒4月の値上がり銘柄数は266銘柄となり、3月(263銘柄)から僅かに増加しました。10%以上上昇した銘柄は22銘柄(3月は32銘柄)、20%以上上昇した銘柄は1銘柄(同7銘柄)でした。値下がり銘柄数は235銘柄(同240銘柄)、そのうち10%以上下落した銘柄は28銘柄(同53銘柄)、20%以上下落した銘柄は4銘柄(同14銘柄)でした。年初来でも値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回り、291銘柄が値上がり(20%以上上昇は47銘柄)、212銘柄が値下がりしました(20%以上下落は19銘柄)。
○市場全体で見ると、S&P500指数の時価総額は4月に5030億ドル増加し(年初来では1兆1190億ドル増)、34兆8440億ドル(2022年に時価総額は8兆2240億ドル減少)となりました。コロナ危機前の2020年2月19日との比較では6兆7810億ドル増加しています。
○人員削減計画の発表が続いています。マクドナルド<MCD>はオフィス閉鎖に踏み切り、人員削減を含む事業再編計画を発表する可能性があります。スイスの新聞報道によると、UBSグループ<UBS>はクレディ・スイス・グループ<CS>買収に伴い、行員全体の最大30%に相当する人員削減に踏み切るとみられています(行員数はスイス国内で1万1000人、スイス国外で2万5000人)。食肉加工大手のタイソンフーズ<TSN>は管理職を15%、従業員を10%(現在の同社の管理職を含む全従業員数は14万2000人)削減する計画を公表しました。
○267社が2023年第1四半期の決算発表を終えました。そのうちの 205銘柄(76.8%)で営業利益が予想を上回り、265銘柄中192銘柄(72.5%)で売上高が予想を上回りました。
⇒2023年第1四半期の営業利益は前期比1.3%増、前年同期比3.4%増が見込まれていますが、2022年末時点での予想と比較すると4.4%低下しています。売上高は過去最高を記録した前期(2022年第4四半期)から3.9%の減少が見込まれています。消費者が買い控え、企業がコストの増加分の全てを消費者に転嫁できていない状況にあります。
⇒2023年第1四半期の営業利益率は2022年第4四半期の10.92%から上昇して11.51%となる見通しです(1993年以降の平均は8.29%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
●利回り、金利、コモディティ
○米国10年国債利回りは3月末の3.48%から3.43%に低下して月末を迎えました(2022年末は3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は 2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは3月末の3.66%から3.67%に上昇して取引を終えました(同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは3月末の1ポンド=1.2326ドルから1.2567ドルに上昇し(同1.2099ドル、同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは3月末の1ユーロ=1.0840ドルから1.1017ドルに上昇しました(同1.0703ドル、同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は3月末の1ドル=132.77円から136.30円に下落し(同132.21円、同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は3月末の1ドル=6.8688元から6.9122元に下落しました(同6.9683元、同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。
○4月末の原油価格は1.6%上昇し、3月末の1バレル=75.54ドルから同76.73ドルとなりました(2022年末は同79.35ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は4月に6.6%上昇しました(4月末は1ガロン=3.765ドル、3月末は同3.533ドル、2022年末は同3.203ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は58.5%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は61.6%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。
○2023年3月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、50%が原油(2月の53%、1月の55%から下落)、15%が連邦税および州税(2月は15%、1月は15%)、11%が販売・マーケティング費(2月は13%、1月は10%)、そして24%が精製コストおよび利益(2月は20%、1月は20%)となっています。
○金価格は3月末の1トロイオンス=1987.40ドルから上昇し1997.90ドルで4月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。
○VIX恐怖指数は3月末の18.70から15.78に下落して3月を終えました。月中の最高は20.08、最低は15.72でした(2022年末は21.67、2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12)。
○同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。
○同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。
○同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。
●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)
○(0.25%の利上げを決定した)3月開催のFOMCの議事録から、利上げ停止が検討されたものの、インフレは依然として高止まり状態にあるとの結論に至ったことが明らかとなりました。また、2023年の後半には緩やかなリセッションに陥る可能性があり、回復に向かうのは2024-2025年になるとの見解が示されました。
○FRBのベージュブック(地区連銀経済報告)では、信用収縮の進行が指摘されています。また、労働市場の逼迫感(人手不足)には緩和の兆候が見られるものの、物価上昇圧力が依然として解消されていないとの記述もあります。
●企業業績
○267社が2023年第1四半期の決算発表を終えました。そのうちの205銘柄(76.8%)で営業利益が予想を上回り、265銘柄中192銘柄(72.5%)で売上高が予想を上回りました。
○2023年第1四半期の営業利益は前期比1.3%増、前年同期比3.4%増が見込まれていますが、2022年末時点での予想と比較すると4.4%低下しています。売上高は過去最高を記録した前期(2022年第4四半期)から3.9%の減少が見込まれています。消費者が買い控え、企業がコストの増加分の全てを消費者に転嫁できていない状況にあります。
○2023年第1四半期の営業利益率は2022年第4四半期の10.92%から上昇して11.51%となる見通しです(1993年以降の平均は8.29%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
○2023年第1四半期中に株式数の減少によって1株当たり利益(EPS)が大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、これまでのところ、2022年第4四半期の19.4%に対して19.8%となりました。この割合は、2022年第1四半期とコロナ禍に見舞われた 2020年第1半期は17.6%でした。
○2023年通年の利益は前年比10.7%増となる見通しで、2023年予想PERは 19.1倍となっています。
○2024年の利益は同12.0%増が見込まれており、2024年予想PERは17.1倍となっています。
●個別銘柄
○日用品小売りチェーンのベッド・バス&ビヨンドは連邦破産法11条による保護の適用を申請しました。同社は再建計画の一環として、資産の一部を整理し、480店舗の営業を継続する意向です。
○娯楽とニュースを提供するフォックス<FOXA>は、選挙の集計システムを手がけるドミニオン・ヴォーティング・システムズから名誉毀損で訴えられていた裁判で、7億8750万ドルの和解金を支払うことを発表しました(訳注:FOXニュースは、ドミニオン・ヴォーティング・システムズが2020年の米大統領選挙で不正に加担したと報道し、ドミニオン・ヴォーティング・システムズから損害賠償を求められていました)。
●注目点
○米国普通株の配当金の支払額は2023年第1四半期に97億ドル増加し、2023年3月までの12ヵ月間では597億ドル増加(2022年第4四半期は163億ドル増加、2022年第1四半期の277億ドル増加からは減少)しました。
○ジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>は、タルク(滑石)を原料とする製品でがんを発症したとして賠償を求められていた訴訟で、25年間で89億ドルを支払う和解案を発表しました(裁判所の承認を条件としています)。
○ビットコインは1月の1万6531ドルから上昇し、4月には一時、3万1006ドルをつけ(2021年11月は6万8790ドル)、2万9341ドルで月末を迎えました。
○娯楽大手のウォルト・ディズニー<DIS>とフロリダ州(および州知事)の対立が深刻化し、ディズニーがフロリダ州の報復措置を非難する訴訟を起こしました。(訳注:ディズニーがフロリダ州で成立した法律を批判したことを受けて、フロリダ州はディズニーに対する税制上の優遇措置の廃止を決定しました)。
※「リセッション対プルバックの戦い (3)」へ続く
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