レポート
配信元:株探ニュース
投稿: 2025/08/11 21:40
トランプ政権は、半導体大手のエヌビディア<NVDA>とAMD<AMD>に中国向けの一部半導体販売による収益の15%を米政府に支払うことに合意したと報じられた。対象となるのはエヌビディアのAIアクセラレータ「H20」と、AMDの「MI308」。これに対して通商の専門家らは警戒感を強めているという。ブルームバーグが伝えた。
元米国通商交渉官で、現在はシンガポールのユソフ・イシャク研究所(ISEAS)所属のオルソン氏は「異例とか前例のないことといった表現では控えめ過ぎる」と衝撃を語ったという。同氏は「いま目にしているのは、米国の通商政策が事実上「収益化」されている状況だ。つまり、米企業は輸出の許可を得るために、米政府に対価を支払わなければならない。もしそうなら、われわれは新しくかつ危険な時代に突入したことになる」と語った。
混乱を招いた関税政策や、パウエル議長への継続的な批判に加え、トランプ大統領は自身のSNSを通じ、経営者に辞任を求めたり、企業の広告キャンペーンにコメントしたりと、様々な発信をしてきた。
トランプ大統領の取引的な政策手法は、日本製鉄によるUSスチール<X>の買収合意にも表れている。この合意には、米国家安全保障規則の順守や、米政府に「黄金株」を与えるなどの条件が含まれていた。日本、韓国、EUはいずれも、米国への数十億ドル規模の投資を約束し、関税率15%の確保に寄与したとされる。アップル<AAPL>などの企業も、数千億ドル規模の投資を約束することで、関税回避を実現してきた。
シンガポールにあるヒンリッチ財団で貿易政策部門を率いるエルムズ氏は「企業や国ごとに特定の組み合わせを作り、他の誰も取引できないが、われわれに直接金を払えば取引できるようにするというような話が出てくるかもしれない」と述べ、他の業界や製品にも同様の措置が広がる可能性を指摘した。
エルムズ氏は、エヌビディアとAMDが条件に同意したとはいえ、この合意の合法性には疑問が残ると指摘する。事実上の「輸出税」に見えるこの取り決めは、米国憲法で禁じられている行為だ。
半導体は、AIや自動化といった将来の産業を巡る米中覇権争いの中心に位置する。バイデン前政権が中国への先端半導体の販売を制限し、これに対抗してエヌビディアは規制を回避できるH20を開発した。トランプ政権は4月、エヌビディアに対する輸出規制を強化し、こうした半導体製品を許可なしに販売することを禁じていた。その後、エヌビディアとAMDは7月中旬、トランプ政権から、対中輸出を許可する方針を伝えられたとしていた。
2008年の金融危機後には民間企業の株式を取得するなど、米政府が介入した例は過去にもある。だが、ワシントンの戦略国際問題研究所のケネディ上級顧問は、今回のような取引は記憶に乏しく、適切な監視なしには「縁故資本主義の国家」に転落しかねないと警告した。
ケネディ氏は「これは米国の経済運営のあるべき姿という点で、非常に大きな転換を意味する」と指摘し、「満足するのは、せいぜい中国だけかもしれない。彼らは、半導体チップを手に入れつつ、米国の政治制度が混乱し、国内の緊張が高まる様子を眺められるだろう」と語った。
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