レポート
配信元:株探ニュース
投稿: 2022/12/27 11:41
●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)
○イングランド銀行は政策会合を開き、政策金利を0.75%引き上げて3.00%としました。8会合連続の利上げとなり、利上げ幅は1989年以来の大きさでした。同行は声明で、英国が「長期的なリセッション(景気後退)に陥る可能性がある」との見方を示しました。
○すべてはFRB次第でしたが、より長くより高い金利を目指す可能性のあるFRBが早期の利上げ終了という市場の期待を打ち砕きました。
○11月1-2日に開催されたFOMCでは、予想されていた通り、政策金利は0.75%(4会合連続)引き上げられて3.75~4.00%となりました。声明では、今後の利上げペースが減速する可能性と、利上げの影響が経済に及ぶまでに時間差がある点が指摘されました。これを受けて市場では、12月の会合で0.50%の利上げを予想し、なかには0.25%の利上げを予想(期待)する向きも見られました。政策金利の発表を受け、S&P500指数は1.3%上昇しました(発表時点で同指数は前日から1.0%上昇していました)。
その後の記者会見でパウエル議長が、FRBの高官が予想していた以上に金利が上昇する可能性が高い(道半ばだ)と発言すると、市場では、FRBが引き締めをすぐには緩めないとの見方が広がり、同指数は(1.3%の上昇後に)3.5%下落し、最終的に前日比2.50%下落してその日の取引を終えました。
○11月1-2日のFOMCの議事録では、金利が想定以上に上昇しているとして、参加者の大半が利上げペースの鈍化を望んでいることが示されました。
○パウエル議長はインタビューで、FRBに利上げペースを緩める準備があることを示唆しました。
●企業業績
○現時点で、486銘柄が2022年第3四半期の決算発表を終えました。このうちの335銘柄(68.7%)で営業利益が予想を上回り、485銘柄中342銘柄(70.5%)で売上高が予想を上回りました(売上高は過去最高を更新する見通しです)。
⇒2022年第3四半期の利益は、前期比8.0%増、前年同期比では2.7%減となる見通しです。
⇒2022年通年の利益は前年比3.5%の減益が見込まれており、2022年予想株価収益率(PER)は20.3倍となっています。
⇒2023年の利益は同13.7%増が見込まれており、2023年予想PERは17.9倍となっています。
⇒2022年第3四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は2022年第2四半期の19.8%から21.6%に上昇しました。この割合は2021年第3四半期は7.4%でした。(2019年第3四半期は22.8%)。
⇒売上高は過去最高となる見通しで、前期比3.5%増、前年同期比13.0%増が見込まれています。
→速報値を見ると、売上高は四半期ベースの過去最高となる見通しですが、その理由は販売数量の増加ではなく、販売価格の上昇によるものとみられます。
⇒2022年第3四半期の営業利益率は、第2四半期の10.86%から上昇して11.34%となる見通しです(1993年以降の平均は8.26%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
●個別銘柄
○イーロン・マスク氏は、440億ドルでソーシャルメディア企業のツイッターの買収を完了し、取締役を全員解雇して、自らが唯一の取締役に就任しました。
○また、報道によると、マスク氏は大規模な雇用削減(従業員の約半数の3700人)に着手しました。
○ツイッターの新サービスにサブスクリプション料金制度を導入しましたが、翌週にはそれを取り消しました。
○マスク氏は、ツイッターの買収額440億ドルのうち335億ドルを調達するために、自身が保有するテスラ<TSLA>株のうち40億ドルを売却しました(年初来で190億ドルを売却)。
○ドラッグストアチェーンのCVSヘルス<CVS>と薬局チェーン持株会社ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス<WBA>は、オピオイド訴訟を決着させるため100億ドル(合計)を支払うことで合意しました。
○ウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)は、台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の株式を41億ドル購入したと発表しました。
○ソーシャルメディア企業のメタ・プラットフォームズ<META>は、1万1000人(従業員の13%)の解雇を発表しました。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、フェースブックとインスタグラムのデジタル広告の減少を理由に挙げています。
○オンライン小売企業アマゾン・ドット・コム<AMZN>は、コスト削減策の一環として、最大1万人の従業員(本社)を解雇することを明らかにしました。
○コンピューターメーカーのHP<HPQ>は、2025年末までに4000~6000人の人員を削減する計画を発表しました。
○小売大手のウォルマート<WMT>はホリデー商戦に向けた臨時従業員を、昨年の15万人に対し、今シーズンは4万人雇用すると発表しました。
○娯楽大手ウォルト・ディズニー<DIS>では、前CEOのボブ・アイガー氏(71歳、15年間ディズニーのCEOを務めた)が同氏の後任であるボブ・チャペック氏の後任として、2年任期の予定でCEOに復帰しました。アイガーCEOの任務の1つは後継者育成計画の策定です。
○スイスの銀行のうち、資産規模第2位のクレディ・スイス(CS、資産規模は1兆4700億ドル)は、顧客が投資や預金を引き揚げていることから、2022年第4四半期は約16億ドルの損失になる見通しを明らかにしました。
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、金融銘柄のアーチ・キャピタル・グループ<ACGL>をS&P500指数に採用し、イーロン・マスク氏によって買収されたソーシャルメディア銘柄のツイッターを同指数から除外しました。
●注目点
○台湾の電子機器メーカーのフォックスコンは、新型コロナ関連の問題により、2022年第4四半期の「iPhone」の生産が中国の工場で減速したことを明らかにしました。
○EUが2022年12月5日からロシア産原油の輸入を禁止(2023年2月5日からはロシア産石油製品の輸入も禁止)するため、ロシア産原油の輸出先が中国、インド、トルコにシフトしたことを受けて、原油価格は80ドルを割り込みました。ロシア・ウクライナ紛争以前は、ロシア産の石油輸出の50%をEUが占めていました(2022年10月時点では31%)。
○良好な数字ではありませんが、30年物住宅ローンの平均金利は、前週の7.08%から6.61%に低下し、過去41年間で最大の低下幅を記録しました。ただし、この金利低下は、米連邦住宅抵当貸付公社(フレディマック)の算出方法の変更を反映したものです。
○イーロン・マスク氏はドナルド・トランプ氏のツイッターへの復帰を許可する予定ですが(トランプ氏のフォロワー数は8800万人)、トランプ氏はトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)が開発した新しいアプリ、Truth Social(トゥルース・ソーシャル)に執着しているようです。
○鉄道業界の4つの労働組合(組合員数11万5000人)は、ホワイトハウスが仲介した労使交渉の暫定合意を否決しました。その結果、2022年12月9日に鉄道ストライキに突入する可能性が出てきたことから、米議会はストライキを回避するための法案の審議を開始しました(法案は下院を通過し、上院に送られました)。
※「期待と歓喜の感謝祭の陰に潜む不安と懸念 (4)」へ続く
株探ニュース
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