レポート
配信元:株探ニュース
投稿: 2023/01/26 11:40
●主なポイント
○S&P500指数はサンタクロースを迎えることなく2022年を終えました。サンタクロースどころか、慈悲深き者は一人も現れることがありませんでした(ただし、7月には9.11%上昇しました。緊急事態には登場していたはずです)。S&P500指数は12月に5.90%下落しましたが、11月に5.38%上昇、10月に8.80%上昇しており、その結果、2022年第4四半期のリターンは7.08%の上昇と、3ヵ月ベースでは年間で最も高いリターンとなりました(9月は9.34%下落、8月は4.24%下落)。残念ながら7.08%の上昇は、1月から9月までの24.77%の下落分を埋め合わせるには程遠い水準で、リターンは通年で19.44%の下落となりました。これに対して2021年は26.89%の上昇でした(2年間では2.36%上昇)。
⇒12月は11セクターすべてが下落しました。公益事業のパフォーマンスが最も高く、下落率は0.77%にとどまりました。一方、パフォーマンスが最も悪かったのは一般消費財セクターで月間の下落率は11.31%となりました。
⇒2022年通年では、エネルギーセクターのみがプラスのリターンをつけ、59.05%上昇しました(ちなみに公益事業は配当込みのトータルリターンがプラス1.57%と、小幅ながらプラスとなりました)。パフォーマンスが最も悪いセクターはコミュニケーションサービスで、40.42%の下落でした。情報技術セクターは2022年に28.91%下落し、指数の下落の約44%を占めました。
⇒12月は値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回りました。値上がり銘柄数は僅か84銘柄(うち5%以上上昇した銘柄は12銘柄、10%以上上昇した銘柄数はゼロ)にとどまり、値下がり銘柄数は418銘柄となりました(5%以上下落した銘柄が236銘柄、10%以上下落した銘柄は81銘柄)。2022年通年でも、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回りました。値上がり銘柄数は139銘柄(10%以上上昇したのは93銘柄、20%以上上昇したのは53銘柄でした)、値下がり銘柄数は363銘柄となりました(10%以上下落した銘柄は283銘柄、20%以上下落した銘柄は204銘柄でした)。また、2022年は11セクターのうち10セクターが下落しました(エネルギーが59.05%上昇した一方で、コミュニケーションサービスは40.42%下落し、騰落率の差が99%ポイントとなりました)。
⇒市場全体で見ると、S&P500指数の時価総額は12月に2兆1560億ドル減少しました(12月末時点の時価総額は32兆1330億ドル)。11月は1兆7360億ドル増加しました。2022年通年では8兆2240億ドル減少しましたが、コロナ危機前の最高値を記録した2020年2月19日との比較では 4兆690億ドル増加しました。
○人員削減の動きが急拡大しました。飲料食品メーカーのペプシコ<PEP>、投資銀行のモルガン・スタンレー<MS>、ゴールドマン・サックス・グループ<GS>、バンク・オブ・アメリカ<BAC>、半導体メーカーのマイクロン・テクノロジー<MU>が人員削減とコスト削減計画を発表しました(11月にはアマゾン・ドット・コム<AMZN>、メタ・プラットフォームズ<META>、ツイッターなどが同様の発表を行いました)。
○銘柄数で97%、時価総額で98%に相当する企業が決算発表を終えました。2022年第3四半期の利益は予想を上回り(とはいえ好調とは言えません)、事前のウィスパーナンバー(アナリストによる非公式の業績予想)より大幅に良好な水準となっています。決算発表を終えた486銘柄中の335銘柄(68.9%)で営業利益が予想を上回り、485銘柄中342銘柄(70.5%)で売上高が予想を上回り、売上高は過去最高を更新する見通しです(販売数量の増加ではなく、販売価格の上昇によるものとみられます)。
⇒2022年第3四半期の営業利益は前期比8.0%増、前年同期比では2.7%減となる見通しです。
⇒売上高は過去最高を記録した前期(第2四半期)から3.5%増加、前年同期比13.0%増が見込まれ、過去最高を更新する見通しです。
⇒2022年第3四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、2022年第2四半期の19.8%に対して21.6%となりました。この割合は2021年第3四半期では7.4%でした。(2019年第3四半期は22.8%)。
⇒2022年第3四半期の営業利益率は第2四半期の10.86%から上昇して11.34%となる見通しです(1993年以降の平均は8.26%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
○S&P500 指数の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)の12月の平均値は1.58%となり、11月の1.61%から低下しました(10月は2.14%)。2022年通年では平均1.84%(11月末時点では1.86%)となりました。2021年は0.97%、2020年は1.51%、2019年は0.85%(2018年は1.21%、2017年は1962年以降で最低となる0.51%)でした。
●利回り、金利、コモディティ
○米国10年国債利回りは、11月末の3.61%から3.88%に上昇して月末を迎えました(2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは、11月末の3.75%から3.97%に上昇して取引を終えました(同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは11月末の1ポンド=1.2056ドルから1.2099ドルに上昇し(同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは11月末の1ユーロ=1.0409ドルから1.0703ドルに上昇しました(同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は11月末の1ドル=138.05円から132.21円に上昇し(同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は11月末の1ドル=7.0925元から6.9683元に上昇しました(同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。
○12月末の原油価格は、11月末の1バレル=80.45ドルから横ばいの同80.45ドル(2022年に同130.50ドルまで上昇しました)、2022年の上昇率は7.0%(2021年末は同75.40ドル)となりました。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は2022年に5.1%下落しました(12月末は1ガロン=3.203ドル、11月末は同3.649ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は66.2%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は37.5%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。
⇒EIAは2021年のガソリン価格の内訳について、53.6%が原油、16.4%が連邦税および州税、15.6%が販売・マーケティング費、そして14.4%が精製コストと利益だと説明しています。
○金価格は11月末の1トロイオンス=1783.10ドルから上昇して1829.80ドルで月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。
○VIX恐怖指数は11月末の20.58から21.67に上昇して月を終えました。月中の最高は25.84、最低は18.95でした(2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12、2017年末は11.05)。
⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。
⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。
●新型コロナウイルスとサル痘
○サル痘の感染拡大ペースは引き続き鈍化しており、(米国では)感染拡大に歯止めがかかったと判断されています。米疾病対策センター(CDC)によると、現時点で米国内では2万9740人の感染が確認されています(11月時点では2万9325人、10月時点では2万8302人)。世界全体の感染者数は8万3424人(同8万2999人、同8万1225人)となっています。
○報道によると、中国では(ゼロコロナ政策からの方針転換により)旅行や社会活動に対する制限緩和を実施して以降、新型コロナウイルスの感染が急拡大しています。今後も感染拡大が続くようであれば(中国国民の多くはワクチン未接種。また、中国製ワクチンの効果は他のワクチンに比べて低い)、製造業や物流に悪影響が及ぶ可能性があり、懸念が強まりました。
⇒中国は(コロナ対策としての各種規制の緩和措置の一環として)自国民の海外渡航制限の緩和を開始しました。一方、一部の国(米国、インド、日本)は中国人の入国に対し、検査による陰性証明を義務付けることにしました。
○新型コロナウイルス関連データ:
⇒新型コロナウイルスによる世界全体の累計死者数は、668万人となりました(11月末時点は663万人)。
⇒新型コロナウイルスの累計感染者数は1億人となりました(同9870万人)。
⇒米国の新型コロナウイルスによる累計死者数は109万人となりました(同108万人)。
⇒新規感染者数の7日間平均は12月末時点で7万509人となり、11月末時点の4万2451人から増加しました。新規感染者数の7日間平均は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点では8万3120人)。また、死者数の7日間平均は413人に減少しました(11月末時点は285人)。
※「年の相場決める1月、企業利益が試金石に (3)」へ続く
株探ニュース
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