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S&P500 月例レポート...

S&P500 月例レポート ― エヌビディアが1兆ドルクラブ・ビッグ5に (1) ―

レポート

配信元:株探ニュース

投稿: 2023/07/21 11:40


S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2023年6月
個人的見解:値上がり銘柄は再び広がりを見せたが、トップ銘柄は不動

 6月の市場は値上がり銘柄数が圧倒的に優勢となり、S&P500指数構成銘柄のうち454銘柄が上昇し(155銘柄が10%以上上昇)、5月の124銘柄から大幅に増加しました。これにより、年初来では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を再び上回り、300銘柄が年初来で上昇(116銘柄が20%以上上昇)しています。また、6月は11セクターすべてが上昇しました。6月の市場は全体的に押し上げられ、S&P500指数 の配当込みのトータルリターンはプラス6.61%となりました。

 過去数ヵ月の市場は時価総額の大きい一部の銘柄が主導権を握り、全体としては値下がり銘柄数の方が多く、足を引っ張っている状況でした。一部の銘柄が主導権を握る状況は続いており、S&P500指数の年初来のトータルリターンはプラス16.89%となっていますが、指数上昇への貢献度でトップ44銘柄を除くと年初来のトータルリターンはマイナスです。とはいえ、5月時点ではトップ44銘柄ではなく8銘柄を除くとマイナスとなっていました。アップル<AAPL>とテスラ<TSLA>が6月も引き続きトップに君臨し、アルファベット<GOOG>と月後半にはセールスフォース・ドット・コム<CRM>が、月間の騰落率に大きくマイナスに寄与しました。それでも、6月の市場は幅広い銘柄がプラスに寄与しましたが、年初来で見ると、一部の銘柄が牽引する状況に変わりはありません。S&P500指数は依然として超大型株の比重が高い状態にあり、上位10銘柄で時価総額の30.5%を占めています(通常は20%台前半でした)。

 6月の注目点として、半導体企業のエヌビディア<NVDA>が時価総額1兆ドルクラブの仲間入りを果たし、アップルは上場企業として初めて時価総額が3兆ドルに到達し、S&P500指数に占める割合が過去最高の7.72%に達しました。現在、1兆ドルクラブには他に、マイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOG>、アマゾン<AMZN>が名を連ねています。

 新規株式公開(IPO)市場も息を吹き返しましたが、パフォーマンスはまちまちです。地中海料理チェーンのカバ・グループ<CAVA>はIPO価格22ドルで上場し、初値42ドル、一時は47ドルまで上昇しましたが、現在は40.95ドルとなっています。韓国料理チェーンのジェン・レストラン・グループ<GENK>はIPO価格12ドルで上場し、16.99ドルで6月を終えました。そのほか、メキシコで産業用不動産の開発と管理を手掛けるベスタ・リアル・エステート<VTMX>、テキサス州で天然ガスの圧縮サービスを提供するコディアック・ガス・サービシズ<KGS>、リサイクルショップを展開するセーバーズ・バリュー・ビレッジ<SVV>、特殊保険や再保険を手掛けるフィデリス・インシュアランス・ホールディングス<FIHL>などがIPOを完了しています。7月は通常、IPOが活発な月で、最近の株価上昇を受けて今年も活況が期待されます。なお、8月は例年IPO件数が少なくなります。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、銀行に対する年次ストレステストの結果を公表しました。今回のテストは、失業率10%、商業用不動産価格の40%下落、住宅価格の38%下落、最低自己資本比率4.5%という想定で実施され、バンク・オブ・アメリカ<BAC>、シティグループ<C>、ゴールドマン・サックス・グループ<GS>、JPモルガン・チェース<JPM>、モルガン・スタンレー<MS>、ウェルズ・ファーゴ<WFC>など、資産規模2500億ドル以上の大手銀行23行が対象となりました。ストレステストの結果、23行すべてが深刻な景気後退シナリオの下でも事業を継続できる十分な資金があることが明らかになりました。想定の下で発生が予想される5410億ドルの損失のうち、1000億ドルは商業・住宅用不動産向け融資から、1200億ドルはクレジットカードから生じる見通しとなり、クレジットカードのエクスポージャーが拡大している点が注目されます。

 FRBはまた、銀行が保有する都市部の商業用不動産向け融資全体のうち、23行が保有するのは20%にすぎず、残りの80%はストレステストの対象となっておらず、大手行のようなグローバルなリソースを持っていない、つまり「大き過ぎて潰せない」銀行に分類されない中堅・中小銀行が保有しているとみられる点を指摘しました。

 銀行は2023年6月30日の取引終了後から、ストレステストの結果に基づき、最新の配当および自社株買いプログラムを発表することができます。ただし、各行とも2023年に入ってそうしてきたように、配当を維持するために自社株買いについては発表を控えるかもしれません(注:6月30日午後4時30分以降、確定ではありませんが、数行が増配の意向を発表しています:バンク・オブ・ニューヨーク・メロン<BK>は四半期配当を0.37ドルから0.42ドルへ、シティグループ<C>は同0.51ドルから0.53ドルへ、ゴールドマン・サックス・グループ<GS>は同2.50ドルから2.75ドルへ、JPモルガン・チェース<JPM>は同1.00ドルから1.05ドルへ、モルガン・スタンレー<MS>は同0.775ドルから0.85ドルへ、ウェルズ・ファーゴ<WFC>は同0.30ドルから0.35ドルへ)。資産規模が1000億?2500億ドルの中堅銀行を対象としたストレステストは1年おきに実施されており、今年はその年ではありませんでしたが、こうした規制上の審査は、今後は毎年実施される見通しです。

 7月はFRBに注目が集まるでしょう。7月25-26日の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の追加利上げが予想されており、市場では、利上げが行われる確率を84%と織り込んでいます。その後の見通しは不透明です。市場は、さらに0.25%の追加利上げを容認しているようですが、9月19-20日のFOMC後の声明発表後なのか、あるいは10月31日-11月1日の後なのかは分かりません。現時点では、最初の利下げは2024年第2四半期になる見通しで、2024年4月30日-5月1日のFOMCと予想されています。

 株式の取引に関しては、企業利益に注目が集まるとみられます。ポジションを取ったり、利益や損失を確定したりする上で、企業利益は常に重要なポイントであり、少なくとも私がS&Pに入社して市場を見てきた184四半期を通じて変わることはありませんでした。現時点で、2023年第2四半期の利益は前期比0.5%減となる見通しですが、ウィスパーナンバー(アナリストによる非公式の業績予想)では1?2%増が見込まれているようです。アナリストはいつだって楽観的です。一方で、エコノミストはそうした予測を疑問視していますが、リセッション(あるいは部分的不況)入りの予想時期は先延ばしされ続けています。最終的に彼らの見方は正しいのかもしれませんが、実際のリセッション入りは2023年末となる公算が大きくなっており、それほど先の話ではありません。現在、S&P500指数の2024年予想株価収益率(PER)は18.3倍となっています。

 6月のS&P500指数は5月末の4179.83から6.47%上昇して4450.38で月を終えました。2023年第2四半期の3ヵ月では8.30%の上昇、年初来では15.91%の上昇、過去1年では17.57%の上昇(配当込みのトータルリターンはプラス19.59%)でした。6月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は5月の0.96%から0.88%に低下(4月は0.92%、3月は1.51%)、年初来では1.18%となりました。2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした。6月の出来高は、4月に前月比24%減少、5月に同8%増加した後、4%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では5%の増加でした。2023年6月までの過去1年では前年比17%増加しました。2022年は同6%の増加でした。

 6月に前日比で1%以上変動した日数は21営業日中4日(上昇が4日、下落は0日)、2%以上変動した日はありませんでした。5月は1%以上変動した日数は22営業日中5日(上昇が3日、下落が2日)、2%以上変動した日はありませんでした。4月は1%以上変動した日数は19営業日中3日(上昇が2日、下落が1日)、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、1%以上変動した日数は124営業日中41日(上昇が25日、下落が16日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。2022年は、1%以上変動した日数は122日(上昇が59日、下落が63日)、2%以上変動した日数は46日(上昇が23日、下落が23日)でした。

 6月は21営業日中5日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動と3%以上の変動はありませんでした(5月は22営業日中9日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上と3%以上の変動はありませんでした)。年初来では1%以上の変動が66日、2%以上の変動が12日、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日、4%以上の変動が4日ありました。

 S&P500指数は6月に6.47%上昇して4450.38で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス6.61%)。5月は4179.83で終え、0.25%の上昇(同プラス0.43%)、4月は4169.48で終え、1.46%の上昇(同プラス1.56%)でした。2023年第2四半期は8.30%の上昇(同プラス8.74%)、年初来では15.91%の上昇(同プラス16.89%)、過去1年では17.57%の上昇(同プラス19.59%)でした。2022年は19.44%の下落(同マイナス18.11%)、2021年は26.89%の上昇(同プラス28.71%)、2020年は16.26%の上昇(同プラス18.40%)、2019年は28.88%の上昇(同プラス31.49%)、2018年は6.24%の下落(同マイナス4.38%)でした。バイデン大統領が勝利した

 2020年11月3日の米大統領選挙以降では32.09%の上昇(同プラス37.76%)でしたが、2022年1月20日の就任以降では15.54%の上昇(同プラス20.05%)でした。(シリコンバレー銀行破綻前の)3月8日からは11.48%の上昇(同プラス12.07%、金融セクターは3.23%下落)、2022年1月3日の高値からは7.22%の下落(同マイナス4.88%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは31.43%の上昇(同プラス38.82%)でした。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は6月に4.56%上昇して3万4407.60ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス4.68%)。5月は3万2908.27ドルで終え、3.49%の下落(同マイナス3.17%)、4月は3万4098.16ドルで終え、2.48%の上昇(同プラス2.57%)でした。2022年1月4日の高値(3万6799.65ドル)からは6.50%下落しました。2023年第2四半期は3.41%の上昇(同プラス3.97%)、年初来では3.80%の上昇(同プラス4.94%)、過去1年では11.80%の上昇(同プラス14.23%)、2022年は8.78%の下落(同マイナス6.86%)でした。

※「エヌビディアが1兆ドルクラブ・ビッグ5に (2)」へ続く

株探ニュース

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